極上の肌触りはここから。メリノウール“ランク”の世界。
季節問わず大活躍するメリノウール。そんなメリノウールですが、お店によって価格に違いがあることに疑問を感じたことはないでしょうか? 実は、同じメリノウールでもランクが存在しており、「繊維の太さ」と「色」によって価格が異なります。 そこで今回は、メリノウールのランクについて詳しく紹介いたします。
メリノウールのランクについて
メリノウールには、繊維の太さによってランク分けがされています。数字が小さくなるほど細く、大きくなるほど太くなります。 より細い繊維ほど採取量に限りがあるため、希少性が高くなり、高級になります。 一般的には、19μmより細いものが高級ウールとされており、価格は高いです。 なぜなら、繊維が細いと加工の難易度が上がり、機械設備や技術が価格に反映されるからです。
ランク | 繊維の太さ(μm) |
---|---|
スーパーエクストラファインメリノ | 直径16.5~17.5 |
エクストラファインメリノ | 直径18.5~19.5 |
ファインメリノ | 直径20~21 |
ミドルメリノ | 直径20~22 |
ストロングメリノ | 直径23~25 |
繊維の太さを「μm(マイクロメートル)」の単位で表します。μmは1ミリメートルの1000分の1と等しい長さです。
羊毛はコーミング作業で長いものと短いものに分けられていきますが、基本的に繊維は長いものほど細く、短いものほど太いです。
細いものは繊維長(糸を作る繊維の長さ)も長く柔らかいので肌当たりが良いものが多いですが、短いものは堅くガサガサしているものもあり、肌当たりもチクチク感が強いです。
また、繊維が細い方が、キューティクルも綺麗なので艶・光沢感に優れていますが、太く短い方はムラが多くなり、光沢感も少なくなります。
繊維の色について
メリノウールは繊維の色によっても価格が変わります。 限りなく白に近い原毛は高く、グレーやブラウンに近いものになると安価になります。 白に近い方が汚れが少なく、様々な色目を混ぜることができない分、採取できる繊維量も少なくなり、高価になりやすいです。
Super○○'sの表記について
コートや服地などの織物になると、スーパー表示というものになります。 もしかしたら、Super100'sのような表記を見たことがある人もいらっしゃるかと思います。 スーパー表示は10刻みでSuper100's、Super110's、Super120'sと大きくなっていき、数字が大きくなると、「原毛の繊維」が細くなります。「糸」が細くなるわけではないので、ご注意ください。
スーパー表示とμmの相対値表は次の通りです。
ランク | 繊維の太さ(μm) |
---|---|
表示なし | 20.0μm以下 |
Super 80’S | 19.5μm |
Super 90’S | 19.0μm |
Super 100’S | 18.5μm |
Super 110’S | 18.0μm |
Super 120’S | 17.5μm |
Super 130’S | 17.0μm |
Super 140’S | 16.5μm |
Super 150’S | 16.0μm |
Super 160’S | 15.5μm |
Super 170’S | 15.0μm |
Super 180’S | 14.5μm |
Super 190’S | 14.0μm |
Super 200’S | 13.5μm |
Super 210’S | 13.0μm |
Super 220’S | 12.5μm |
Super 230’S | 12.0μm |
Super 240’S | 11.5μm |
Super 250’S | 11.0μm |
番手との違い
番手とは、「糸の細さ(太さ)」を表す単位です。先ほどのSuper○○'sとは別の単位です。 番手は重量1,000gの綿を何メートル伸ばせる細さか?が基準となります。 例えば、120番手であれば、1,000gの綿を120,000m伸ばせる細さということです。
同じ重さに対して糸が長くなるごとに番手の数値も増加するため、番手の数値が高いほど糸は細いとされています。
番手とスーパー表示の違いをまとめると、糸の細さを表すなら番手、繊維の細さを表すならスーパー表示ということです。
ちなみに、SUPER 100’SよりSUPER 150’Sの方が必ずしも糸が細いとは限りません。 これは、糸は繊維が束になったものだからですね。 繊維が細くても糸にしたときに太くなることがあるため、SUPER 100’Sで作られた糸がSUPER 150’Sで作られた糸より細くなることがあります。
同じSuper○○'sの表記でも同じ品質ではないので注意
例えば、同じSuper100'sの商品が2つあったとしても、その2つの価格は違うことがあります。 これは同じSuper100'sでも同じ品質ではないからです。なぜなら、羊そのものの個体や育った環境によって羊毛の質が異なるからです。
例えば、1匹1匹大切に育てられた羊と、大量の羊を画一的に育てられた羊とでは、刈った毛の質が全く異なります。 また、個体によって遺伝的な理由で毛の質が異なります。人間も髪の毛を毎日お手入れしているかどうかや、両親の遺伝によって髪質が異なってくるのと一緒です。
Super○○'sという表記はあくまでも繊維の太さの単位でしかないため、最終的に羊そのもののポテンシャル次第で最終製品の品質が変わります。
また、生地を構成している繊維の全てがSuper100'sでなくても、表記としてSuper100'sと表示することができます。 構成している繊維のすべてがSuper100'sであれば高く、部分的にSuper100'sであれば、安くなります。
以上のことから、同じSuper100'sの商品だったとしても価格が異なるというわけです。
Super○○'sの数値が高ければ良いというものではない
「Super100'sよりSuper150'sのほうが良さそう」と、つい「数値が高いほうが良い」「繊維は細いほうが良い」と考えてしまうかもしれませんが、実はそうではありません。 原毛の質の良さ、繊維の細さ、糸の細さなどの評価すべき項目がいくつか存在し、かつ着用目的によってそれぞれの適切な繊維があります。
メリノウールは繊維が細く、色が白いほど採取量が少なく高級にはなりますが、それらが着用したい服に合っているかと言われるとそうではありません。 高級になるのはあくまでも希少性からくるものであり、最終商品の品質を保証するものではありません。日常生活で頻繁に使うようなTシャツやスーツであれば、Super150'sは繊維が細すぎます。
要するに、繊維としての品質と、最終商品としての品質の定義が異なるため、色んな要素のバランスを考えて商品選びをした方が良いということです。